令和7年8月に発生した豪雨により、熊本県内では多くの中小企業が深刻な被害を受けました。そんな被災事業者の再建を支援するため、熊本県では**「被災中小企業者再建支援補助金」**を創設しました。
本記事では、この補助金の概要から申請方法、対象経費、必要書類まで、中小企業診断士の視点から詳しく解説します。
被災中小企業者再建支援補助金とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金名 | 令和7年8月豪雨に係る被災中小企業者再建支援補助金 |
| 補助上限額 | 1事業者につき3億円 |
| 補助率 | 3/4(国1/2 + 県1/4) |
| 対象者 | 熊本県内に事業所を有する中小企業者 |
| 申請受付開始 | 令和8年1月26日(月) |
| 申請方法 | 郵送または持参 |
この補助金は、令和7年8月豪雨により被災した事業用の施設及び設備の復旧に要する経費の一部を、国と県が支援するものです。被災地域の速やかな復興と、事業者の再建を後押しすることを目的としています。
補助金の特徴
- 補助率3/4:復旧費用の75%を国と県が負担
- 上限3億円:大規模な被害にも対応可能
- 事前着手可能:発災日(令和7年8月10日)以降の経費も対象
- 修理が原則:ただし条件次第で建替・入替も可能
目次
- 補助対象者
- 補助対象経費
- 補助対象外となる経費
- 申請の要件
- 補助対象期間
- 申請方法・提出先
- 申請に必要な書類
- 申請から補助金受取までの流れ
- 実績報告に必要な書類
- 車両の取扱い
- 賃貸物件・リース品の取扱い
- その他の留意点
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
補助対象者
熊本県内に事業所を有する中小企業者が対象です。
中小企業者の定義
| 業種 | 資本金の額(出資の総額) | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 宿泊業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
※資本金または従業員数のいずれかを満たせば対象となります。
その他の対象者
- 中小企業団体(事業協同組合、商工組合など)
- 特別の法律によって設立された組合(構成員の2/3以上が中小企業者)
- 商店街振興組合など
- 商工会、商工会議所
補助対象外となる事業者
以下に該当する場合は補助対象外です:
- 大企業、みなし大企業
- 農林水産事業者(一次産業)※ただし加工業・販売業の施設・設備は対象
- 一般財団法人、公益財団法人
- 医療法人、社会福祉法人、学校法人
- 特定非営利活動法人
- 宗教法人
- 性風俗関連特殊営業を営む者
- 熊本県税に未納がある者
- 暴力団関係者
補助対象経費
被災した事業用の施設及び設備の復旧に要する費用が補助対象です。
施設の復旧
| 対象となるもの | 対象とならないもの |
|---|---|
| 事業用の施設(店舗、事務所、工場、倉庫等)の修繕費または建替費 | 住宅用建物(アパート・マンション等の賃貸物件含む) |
| ※原則、登記されている施設 | 福利厚生施設(社員寮、休憩所等) |
| 土地の測量や造成、地盤改良に係る費用 |
建替が可能なケース:
- 「全壊」または「大規模半壊」と判定された場合
- 見積書の比較により、修繕費よりも建替費が安価な場合
設備の復旧
| 対象となるもの | 対象とならないもの |
|---|---|
| 事業用の設備(機械装置、工具、車両等)の修理費または入替費 | 賃貸目的の設備(レンタカー等) |
| ※原則、資産計上されている設備 | 汎用性のある備品(テーブル・イス、食器、什器等) |
| 商品、在庫、仕掛品、原材料 | |
| 消耗品、ソフトウェア等の無形資産 |
入替が可能なケース:
- 修理不能と認められる場合
- 見積書の比較により、修理費よりも入替費が安価な場合
共通事項
- 復旧のために発生する処分費、撤去費、据付費、運搬費等も対象
- 保険金・共済金の受取がある場合は、その金額を控除した額が補助対象経費
補助対象外となる経費
以下の経費は補助対象外です:
- 被害を立証する書類が提出されないもの
- 令和7年8月豪雨に起因せず使用不能となったもの
- 発災前から使用されていなかったもの(空き店舗等)
- 租税公課、保険料、保守費用
- 水害に伴う清掃・消毒費
- 官公庁への手続きに係る費用
- 自社で復旧する場合の人件費
申請の要件
補助金を受けるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1. 事業継続計画(BCP)の策定
「事業継続計画(BCP)」を策定する必要があります。
熊本県では、事業者が容易に取り組めるよう**「熊本県版事業継続計画(BCP)シート」**を県のホームページで公開しています。事業者独自のBCPや、国が認定する事業継続力強化計画でも可能です。
2. 損害保険への加入
補助対象となる施設や設備に対し、付保割合30%以上の自然災害(風水害を含む)による損害を補償する保険・共済に加入する必要があります。
※小規模事業者は加入推奨(必須ではない)
小規模事業者の定義
| 業種 | 従業者数 |
|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業その他 | 20人以下 |
| 卸売業、小売業、サービス業 | 5人以下 |
| 宿泊業、娯楽業 | 20人以下 |
補助対象期間
原則として、交付決定日以降に発生した経費が対象です。
ただし特例として、発災日(令和7年8月10日)以降であれば、交付決定前に復旧した経費も補助対象となります。
※写真や書類等により被害状況の確認ができる場合に限ります。
申請方法・提出先
申請受付期間
令和8年1月26日(月)から申請を受け付けています。
※終期は現時点で未定ですが、申請はお早めにお願いします。 ※申請は1事業者1回限りです。
提出先
**「被災中小企業者補助金受付センター」**に郵送または持参にて提出してください。
〒862-0954
熊本市中央区神水1丁目3-1 ヨネザワ熊本県庁前ビル3階
電話番号:096-237-7680
FAX:096-237-7688
E-mail:info@k-saiken2508.com
受付時間:9時00分〜17時00分(土曜・日曜・祝日を除く)
申請に必要な書類
共通書類
- 交付申請書(様式あり)
- 補助事業計画書(様式あり)
- 履歴事項全部証明書(法人)または住民票(個人)
- 貸借対照表及び損益計算書(法人)または確定申告書(個人)
- 熊本県税に未納がないことの証明書(納税証明書:28号様式)
- 暴力団排除に関する誓約書(様式あり)
- 役員等名簿(様式あり)
- 被災(罹災)証明書
- 被害状況が分かる写真
- 復旧場所を示す地図
- 保険(共済)金の受領を証する書類
施設の復旧に必要な書類
- 建物の登記事項証明書
- 復旧(修繕または建替)の見積書
- 平面図・立面図等の図面
- 補助対象施設の利用状況表(様式あり)
- 按分計算書(按分が必要な場合)
設備の復旧に必要な書類
- 固定資産台帳または償却資産台帳
- 復旧(修繕または入替)の見積書
- 設備の配置図
- カタログ、仕様書(入替の場合)
- 修理不能申告書(入替の場合)
- 車検証(車両を復旧する場合)
- 永久抹消登録証明書(車両の入替の場合)
申請から補助金受取までの流れ
1. 補助金交付申請
↓
2. 交付決定
↓
3. 補助事業(復旧)の着手・完了
※発災日以降であれば事前着手も可能
↓
4. 実績報告(事業完了から15日以内)
↓
5. 現地確認・額の確定
↓
6. 請求
↓
7. 補助金の支払い
実績報告に必要な書類
- 実績報告書(様式あり)
- 補助事業実績書(様式あり)
- 財産管理台帳(様式あり)
- 復旧状況が分かる写真
- 施工(納品)業者との契約書
- 施工(納品)業者からの請求書
- 施工(納品)業者へ支払ったことが分かる書類
- 設計図書・竣工図面(施設の場合)
- 納品書、保証書(設備の場合)
- 車検証(車両入替の場合)
- 事業継続計画(BCP)
- 保険(共済)に加入したことが分かる書類
※実績報告は、事業完了から15日以内に提出してください。
車両の取扱い
補助対象となる車両
被災時に申請者が所有し、事業用のみに使用していた車両が対象です。
以下の要件を複合的に確認します:
- 車体に企業名や屋号等が明示されていること
- 事業の用に供していたことを証すること(運行日誌等)
- 自動車保管場所が事業所所在地となっていること
- 任意保険の使用目的が「事業用」となっていること
入替の場合の注意点
- 被災車両は**廃車(永久抹消)**にする必要があります
- 中古市場に出回るもの(下取り)は修理可能と判断されるため、入替は認められません
復旧後の遵守事項
- 補助金の交付決定を受けた方の名義で登録すること
- 車体に企業名や屋号等を明示すること
- 運行日誌を記録すること
- 任意保険の使用目的を「事業用」とすること
賃貸物件・リース品の取扱い
補助対象となるケース
賃貸物件(施設)やリース品(設備)が、店子または使用者の事業継続に必要不可欠な場合は補助対象となります。
※住居用の賃貸物件やレンタカー等は対象外
申請者
原則として、施設・設備の所有者である大家またはリース会社が申請者となります。
※特段の事情がある場合は、店子・使用者が申請者となれる場合もあります。
その他の留意点
見積書の取得
1件当たりの工事費が100万円(税込)以上となる場合は、2者以上から見積書を取得してください。
※やむを得ない理由がある場合は、「見積書が不足している理由書」の提出により1者見積もりも可
補助金の支払い
- 原則として精算払(額の確定後)
- 一定要件を満たす場合は概算払も可能(1回限り)
財産管理・経理
- 復旧した施設・設備は資産計上してください
- 帳簿や証拠書類は10年間保存が必要
- 不正があった場合は補助金返還を命じます
財産処分の制限
復旧した施設・設備は「処分制限財産」に該当し、一定期間内の譲渡、貸付、廃棄等には県の承認が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 登記されていない施設や資産計上されていない設備でも対象になりますか?
被災前に所有していたこと及び事業用に用いていたことを証明できれば、補助対象となる場合があります。施設の場合は固定資産課税台帳証明書、設備の場合は売買契約書などで証明できます。個別にご相談ください。
Q2. 既に復旧を終えている場合も申請できますか?
はい。発災日(令和7年8月10日)以降に復旧した経費であれば、交付決定前でも補助対象となります。ただし、写真や書類等により被害状況の確認ができる場合に限ります。
Q3. 店舗兼住居の場合はどうなりますか?
事業用部分と一体となっている場合は、面積按分により事業用部分のみが補助対象となります。
Q4. 従前よりも高機能な設備に入れ替えることはできますか?
可能です。ただし、補助対象経費は原状回復に必要な経費(同等設備への入替費)が上限となります。
Q5. 補助金はいつ支払われますか?
補助金は精算払が原則です。補助事業完了後に実績報告を提出し、現地確認・額の確定を経て支払われます。一定要件を満たせば概算払も可能です。
まとめ
熊本県被災中小企業者再建支援補助金は、令和7年8月豪雨で被災した中小企業者にとって、事業再建の大きな支えとなる制度です。
ポイント:
- 補助率3/4、上限3億円という手厚い支援
- 事前着手可能:発災日以降の復旧費用も対象
- 申請は1事業者1回限りなので、復旧計画を十分に検討してから申請を
- BCP策定と損害保険加入が要件
- 申請書類は多岐にわたるため、早めの準備が重要
補助金についてのご相談は補助金エアポートへ
経済産業大臣認定の中小企業診断士との無料相談が可能です。
相談窓口
被災中小企業者補助金受付センター
- 住所:〒862-0954 熊本市中央区神水1丁目3-1 ヨネザワ熊本県庁前ビル3階
- 電話:096-237-7680
- FAX:096-237-7688
- E-mail:info@k-saiken2508.com
- 受付時間:9:00〜17:00(土日祝除く)
商工会議所・商工会
申請書の作成等の支援を行っています。お近くの商工会議所・商工会へご相談ください。
参考リンク
※本記事の内容は令和8年1月15日作成の「被災中小企業者再建支援補助金の手引き」に基づいています。最新情報は公式サイトをご確認ください。

